不妊症の原因と一般不妊検査
不妊症の原因
不妊症には、男性に原因がある男性不妊と、女性に原因がある女性不妊があります。妊娠が成立するためには、男女ともに様々なプロセスがありますが、そのどこかに異常が起きることが不妊症の原因です。WHOが不妊の原因が男女のどちらにあるのかを調査した結果、女性のみに原因があるケースは約41%、男性のみの場合は約24%、男女両方に原因がある場合は約24%、原因不明は約11%ということが判明しました。
妊娠成立までのプロセスをみると、男性では精巣で造られた精子が精管に移動・貯蔵された後、尿道から射精されます。一方、女性では卵巣で成熟した卵子が排卵された後、卵管に捕捉されて受精し、子宮に移動し着床します。不妊検査では、これらのプロセスのどこに異常があるのかを調べますが、検査をしても原因の特定できない「原因不明不妊症(機能性不妊症)」も10〜20%みられます。不妊症は夫婦の年齢が上がるほど増加することから、加齢(=卵子や精子の老化)が大きな一因と考えられています。
このような方には早めの受診をお勧めします
- ・もっとも妊娠しやすいと言われる20代前半に思うように妊娠しない
- ・30代前半で1年様子を見ても妊娠しない
- ・35歳以上で半年ほど様子を見ても妊娠しない
- ・30歳代後半〜40歳代で妊娠を希望している方
- ・なかなか自分で排卵日予測をするのが難しい
- ・ご夫婦のどちらに原因があるか分からず不安を抱えている
- ・2人目がなかなかできないと感じる時
一般不妊検査
適切な治療を受けるためには、検査が必須です。まずは初診時に感染症検査を受けていただきます。女性は検査項目が多く、月経周期の中の決まった時期に行うものもあるため、約1~2ヶ月かかりますが、検査スケジュールを守ってきちんと受けましょう。男性の場合は、感染症検査と精液検査が必須です。ほとんどの検査が自費のため、保険診療に入る前に受けることをお勧めします。
STEP.01 超音波検査
超音波検査で子宮筋腫や子宮腺筋症の有無、卵巣嚢腫の有無を調べます。
STEP.02 卵管疎通性検査(通水検査)
卵管の通過性を診断する検査です。タイミング法や人工授精で妊娠するためには少なくとも片方の卵管の通過性が保たれていることが必須となります。(この検査では排卵した卵を卵管が拾い上げているかはわかりません。)
子宮から卵管に生理食塩水を送り、同時に行なう経腟超音波検査で卵管の通過性を確認します。
STEP.03 子宮鏡検査
子宮鏡検査とは、子宮の中に細いカメラを入れて子宮の内部を直接観察するものです。子宮内部に筋腫やポリープが見つかった場合、位置や大きさによっては手術を勧めることがあります。
STEP.04 慢性子宮内膜炎検査(CD138検査)
慢性子宮内膜炎の有無を調べる検査です。慢性子宮内膜炎は受精卵の着床を阻害します。タイミング・人工授精・体外受精のすべてにおいて反復不成功にある方の約30%に慢性子宮内膜炎を認めるといわれています。検査で陽性と判定された場合は抗菌薬を2週間内服し、改善しているかどうか判定するため再検査を受けていただきます。改善していない場合や改善傾向にあるが治癒しきっていない場合はほかの(セカンドライン)抗菌薬を内服します。
STEP.05 ヒューナーテスト(性交後試験)
排卵の時期に性交してもらい、通常12時間以内に子宮頸管の粘液を採取して顕微鏡で観察し、動いている精子の数を評価します。動いている精子が多ければタイミング法から、精子はあっても動いているものが少ない場合は人工授精からの治療となります。
ヒューナーテストで不動精子も含めて全く精子が見つからない場合は、以下のことが考えられます。
- ①テストする時期が適切ではなかった(日にちを変えて再検査します)。
- ②精子が勢いよく通り抜けてしまった後だった(この場合再検査の時は性交から検査までの時間を短くして行います)。
- ③無精子症あるいは乏精子症である(早めの精液検査をお勧めします)。
STEP.06 精液検査
2~7日間程度禁欲をした後、マスターベーションで精液を容器に採取していただき、検査をします。男性が来院されるか、またはご自宅で採取後、奥様が当院に持参していただいてもかまいません。採取した精子は室温(25度程度)から36度以下で搬送します。採取してから2時間以内にお持ちください。遠方の方は院内での採取をお勧めします。精子の状態は測定ごとに変動することが多いため、1回目の精子が不良であった場合は複数回検査が必要となります。