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保険診療をご希望の患者様へ

保険診療をご希望の患者様へ

一般不妊治療も生殖補助医療も、保険での治療をご希望される場合は以下をご確認いただき、必要書類をご用意の上、ご来院くださいませ。

年齢・回数制限

一般不妊治療…年齢や回数制限はありません。

生殖補助医療…

  • 1.年齢:治療計画作成時点で女性の年齢が43歳未満
  • 2.回数:胚移植の回数が以下のように制限されています。
  •      40歳未満では6回まで
  •      40歳以上43歳未満では3回まで

ご夫婦の婚姻状況確認書類

法律婚である場合はその事実関係を、法律婚以外の場合は患者様及びそのパートナーが事実婚関係にある旨の申告とそれぞれの確認を行うことが厚生労働省から指導されています。

当院では確認手段として、以下の書類をご提出していただきますので、ご用意をお願いいたします。

法律婚の場合…ご提出いただく日から3ヵ月以内に発行された戸籍謄本(「全部事項証明」原本)

法律婚以外の場合…法律婚同様、お二人のそれぞれの戸籍謄本とご提出いただく日から3ヵ月以内に発行された住民票原本(同一世帯であることの確認のため)

治療計画の説明・同意

保険診療を行うためには、治療開始前に治療計画書を作成し、一連の治療をその計画に基づいて行う必要があります。治療計画の説明に当たっては、原則としてご夫婦同席の下で実施することとなっています。ご都合をつけて、ご夫婦でご来院ください。

なお、一般不妊治療から生殖補助医療にステップアップする場合も再度ご夫婦でのご来院が必要になります。

混合診療の禁止

保険診療の期間中に自費の治療を実施すると、その治療周期は全額自費料金での治療になります。生殖補助医療の「一連の治療」とは、採卵の準備から胚移植の結果確認までが含まれ、その間に自費診療(先進医療を除く)を併用することはできません。

ご参考

厚生労働省のホームページに、保険適用の概要が公開されておりますので、お時間のある時にご一読ください。

厚生労働省ホームページ 「不妊治療に関する取組」

一般不妊治療[タイミング法・人工授精]

タイミング療法

タイミング療法とは、基礎体温や排卵検査薬、超音波検査などを用いて排卵日を予測して、排卵の少し前から排卵直後までの妊娠しやすいタイミングに合わせて性交を行うことで、妊娠の確率を高める方法です。タイミング療法は、少なくとも一方の卵管は通過性があること(通水検査で確認します)、男性に不妊原因がないことが重要です。また、くすりを用いて卵巣を刺激(排卵誘発といいます)し排卵しやすくさせる場合もあります。
なお、妊娠するのは排卵日5日前から排卵日までの6日間です。もっとも妊娠しやすいのは排卵日1~2日前であり、排卵日から性交が隔たる程、妊娠率が低下すると言われています。

タイミング療法の妊娠率

妊娠しやすい男女の場合、タイミング療法によって1周期で約20%が妊娠に至ります。不妊症の方の場合は、タイミング療法による1周期での妊娠率は数%といわれています。

タイミング療法の費用

タイミング療法の費用は、通院や検査の回数、薬剤処方の有無などにより異なるため一概にはいえませんが、一般的には保険診療で1周期 8,000円程度、自費診療で1周期 29,000円程度です。

人工授精(AIH)(または子宮腔内精子注入法:IUI)

人工授精とは、女性側の排卵の時期に合わせて洗浄濃縮したパートナーの精子を子宮内に注入する方法です。タイミング療法との違いは精子が入る場所だけで、受精から妊娠までの過程は全く同じであるため、限りなく自然妊娠に近い方法だと言えます。自然妊娠では膣に精液が入り、そこから精子が頸管粘液内を通って子宮、卵管へと到達するのに対し、人工授精は頸管粘液には触れず直接子宮内に洗浄濃縮した精子を注入しますので、精子と卵子が出会う確率が上がります。

人工授精での妊娠率

人工授精1回の妊娠率は5~10%、人工授精で妊娠される方の約90%は4~6回までに妊娠に至るため、施行は最大6回程度までとお考えください。体外受精へのステップアップをご希望されず、人工授精継続を希望される方は医師にご相談ください。

人工授精が有効な方

  • ・軽度の男性不妊要因(軽度の乏精子症・精子無力症など)
  • ・フーナーテスト(精子と頸管粘液の相性)が不良な場合
  • ・EDの場合や仕事の都合などで性交渉が難しい場合

人工授精のスケジュールについて

月経2~3日目   超音波検査 卵胞を発育させるための薬が処方されることがあります。
   ▼
月経10~12日目  超音波検査 注射をすることがあります。
   ▼
人工授精1~2日前 排卵を促すため、注射(保険・自費)や点鼻薬(自費)を使用します。
   ▼
人工授精当日
   ▼
人工授精後12日間 内服薬でホルモンを補充します。

人工授精当日の流れ

パートナーが精子を採取して2時間以内に持参いただきます。検体をお預かりして処理に1~2時間かかります。処理後、超音波検査にひきつづき、子宮内に精子濃縮液をゆっくり注入します。当日排卵済みであっても妊娠率には影響しません。特に痛みなどの苦痛はありません。その後に、医師から精子の検査結果説明、看護師から薬の服用指導、注意事項、次回の外来受診の予約の説明があります。

人工授精の費用

人工授精の保険適用の費用は5,460円となります。自費の費用は 33,000円です。それ以外に診察日ごとに超音波検査や薬剤の費用などがかかります。

一般不妊治療を続けても妊娠しない理由

タイミング療法や人工授精を続けても妊娠しない場合はいくつか理由が考えられます。

①卵管のピックアップ障害
卵を採りだして精子と出会わせると95%程度の人は受精するので、大部分の人は、卵管の中で精子と卵子が出会っていないということになります。すなわち卵管采が卵を拾い上げていないということです。しかし、どんな卵管の検査を受けても卵管の通過性は分かりますが、ピックアップ障害については分かりません。仮に妊娠すればピックアップ障害はないと言えます。体外受精の場合、受精した胚を子宮内に移植するため、この問題は関係ありません。

②卵子の質が悪い
卵の質が悪くて赤ちゃんにならないと言うことが20~30%程度の人に起こります(女性の年齢が35歳を超えると卵の質が悪い人が多くなります)。卵が良いか悪いかは超音波で見ても、AMHやFSHなどのホルモンを測っても分かりません。卵を取り出して受精させ、受精卵の発育を見れば詳しく評価することができます。

③受精障害
精液検査が正常でも卵子に付着しない、精子の受精障害が5%程度と少ないですが起こります。精子の検査データが良くてもその能力までは分かりません。卵を取り出して精子と出会わせてみてみれば、正常受精するかが確認できます。 受精障害がある場合は顕微授精を行います。

以上のように通常の検査や治療法では妊娠という結果が出なければ分からないことも多く、治療のステップアップをして初めてわかることがあります。

治療のステップアップについて

不妊症の原因は様々であり、それに応じて治療法も異なりますが、基本的には簡便なものから始めて、妊娠が得られなければより高度な治療にステップアップしていきます。不妊治療の基本的な流れは、①タイミング療法→②人工授精→③体外受精→④顕微授精です。
なお、治療法の選択は、不妊原因や年齢などを考慮して個別に判断されます。私たちはご相談いただいたご夫婦の状況(年齢、不妊期間、過去の治療歴、ご夫婦の不妊原因や程度など)に合わせて、最適な治療方法をご提案いたします。そのため、不妊治療は必ずしも画一的にステップアップを行うべきではなく、治療の流れは患者様お一人お一人で異なります

生殖補助医療[体外受精・顕微授精]

体外受精とは

体外受精とは、排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し(採卵)、卵子と精子を培養液の中で出会わせること(媒精)によって受精させ、分割した卵を子宮に戻す(胚移植)不妊治療のことです。卵子の入った培養液中に精子をふりかけて自然に受精させるため、ふりかけ法とも呼ばれています。ピックアップ障害や卵管閉塞など、何らかの理由で卵子と精子が出会えない方や、一般不妊治療で妊娠しない方の治療法です。

顕微授精とは

精子の数が少ない、運動率が悪い、といった方は通常の体外受精では受精しない場合が多く、また精液所見は正常でも体外受精では受精しないカップルが存在します。
そこで顕微鏡と特別な装置を使い、一個の形態が正常で活発な精子を針のように細くしたガラス管に吸い込んでおき、卵細胞の中に直接ガラス管の針を刺して一個の精子を卵細胞内に注入する方法を用います。これが「顕微授精(ICSI)」です。

体外受精/顕微授精のメリット

  • ・一度に多くの卵子を採取して受精させ、複数胚の中から良好胚を選んで移植することで妊娠への近道となる
  • ・余剰胚がある場合凍結しておくことで次回以降の移植に利用できる(採卵を省略できる)
  • ・移植胚の個数をコントロールすることで多胎を防ぐことができる
  • ・体外で卵子や胚の成長を観察することで一般不妊治療ではわからなかった卵子の質、精子の受精能力、着床の問題などが明らかになる

体外受精/顕微授精の流れ

  1. 卵巣刺激:卵巣を刺激して複数の卵胞を発育させます。
  2. 採卵:成熟した卵子を体外に採り出します。
  3. 媒精・培養:卵子と精子を出会わせ(顕微授精の場合は精子を卵子内に細い針で注入して)、受精させ体外で育てます。
  4. 胚移植:正常な受精をして発育した受精卵の中で、赤ちゃんになる確率の高い胚を選んで原則1個を子宮に戻します。複数の胚ができた場合は凍結保存しておくことで、新鮮胚移植で妊娠できなかった場合でも、次は採卵を省略して移植のみ行うことができます。

当院で行っている顕微授精について

顕微授精

  内容 メリット デメリット
C-ICSI
(conventional ICSI)
透明帯に針を押しつけて
穴をあける
卵子の活性化が
起きやすい
P-ICSIよりも変性率が
高い
P-ICSI
(piezo ICSI)
振動で透明帯に穴をあける 変性が少ない 卵子の活性化が起こらないことがある
M-ICSI
(modified ICSI)
C-ICSIに手を加えて卵子の活性化を促す C-ICSIよりも胚の発生がよくなることがある C-ICSIよりも変性率が高い、追加費用がかかる
これまでの治療内容や女性の年齢などにより、どの顕微授精にするかをご提案いたします。
3種類の顕微授精の違いについては、WEB説明会(動画)の「ICSI(顕微授精)の種類と特徴について」にて詳しくご覧いただけます

精子の選別方法

  内容 メリット デメリット

PICSI(ヒアルロン酸ICSI)

ヒアルロン酸に結合した精子でICSIする 成熟精子をICSIに使用できる 成績が改善しないこともある
ZyMōt 精子の運動能力を利用した選別法 DNAの損傷の少ない精子でICSIできる 精子数が少ない場合は使用できないこともある

卵子活性化

  内容 メリット デメリット

カルシウムイオノフォア

ICSI後の卵子をカルシウム液に浸ける 卵子の活性化がおこりやすい 適応症例の見極めが難しい

胚移植について

採卵した周期に発育の早い胚があれば、採卵後3日目または5日目で移植を行うことができます。採卵周期では、後述の通り刺激の影響により子宮の内膜が胚の日付よりも早く進んでいるため、着床に最適な状態ではありません。また、特に採卵数の多い場合は、OHSSといった副作用を予防するため、妊娠を避けなければならない状況もあり得ます。採卵後の胚の状態や体調などによって、移植を行うかどうか相談します。

移植しなかった胚は、胚盤胞まで育ててからガラス化(凍結)によって保存します。凍結胚移植については、自然周期(自身の排卵に合わせた)移植とホルモン補充周期(薬で内膜を厚くしてから)移植があります。それぞれのメリット・デメリットを以下に説明します。どちらが合っているかは人によって異なりますので、医師と相談の上決定します。

自然周期移植

長所

  • 自然に近い方法なので、より生理的である
  • ホルモン補充期間がやや短い
  • ホルモン補充周期と比較して妊娠中の合併症(妊娠高血圧症、癒着胎盤)のリスクが低いとの報告がある

短所

  • 通院の回数が多い(移植までに4回程度)
  • 移植日が都合に合わせて決定できない
  • ホルモン値が悪い場合キャンセルとなる可能性がある

ホルモン補充周期移植

長所

  • 通院回数が少なくてよい(移植までに最低1回)
  • スケジュールの調整がしやすい

短所

  • ホルモン補充期間が長い(9週まで)
  • まれにホルモン補充周期では着床し難い症例がある
  • 自然周期と比較して妊娠中の合併症(妊娠高血圧症、癒着胎盤)のリスクが高くなるとの報告がある

胚盤胞のガラス化保存について

HARTクリニック(広島・東京)では、2003年10月にこの方法を完成させると、この独自性が世界に認められ世界中から多くの医師や胚培養士がこの方法を学びにやってきました。この方法を用いて、現在世界中で胚(受精卵)の保存や、卵子(未受精卵)の保存が行われています(卵子の保存はガラス化法で初めて可能になりました)。

さらに当院では、胚盤胞のすべての細胞を瞬時にガラス化するため、収縮した胚盤胞を180度ではなく、360度の方向から超急速にガラス化するという、他の施設とは異なる、かつ技術と熟練を要する方法でガラス化保存(凍結)を行っております。日本でこの方法を用いている不妊治療施設は、当院を含め3施設のみです。

胚盤胞を治療に用いる利点は、

  • 1.すでに胚盤胞になっている受精卵は赤ちゃんになる確率が高い
  • 2.着床状態の改善が期待できる

の2点です。

1.は当然ですが、赤ちゃんになる受精卵は胚盤胞になります。胚盤胞にならない卵を移植しても妊娠しません。ただし、ラボ内の環境が最適でなければ良い受精卵は育ちません。東京HARTの胚盤胞到達率は、52~60%です(通常の施設では33%程度です)。

2.については、採卵周期は黄体ホルモンが早く上昇するため子宮内膜の日付が約1.8日受精卵より早く進んでいると考えられています。移植日にこのずれがあるため子宮内膜と胚盤胞が対話できずに着床しない患者さんが少なからずいます。胚盤胞をガラス化保存し、採卵周期とは別の周期で子宮内膜を作成(子宮内膜と胚盤胞の日付をずれないように同期させて周期を作成)し、ガラス化保存した胚盤胞を融解移植すれば着床の問題はほとんど解決できるのです。

胚盤胞移植についてもっと知りたい方は以下のリンクも合わせてご覧下さい

>>透明帯開孔術について

>>胚移植の方法について

>>胚盤胞の質の評価について