卵子凍結保存を希望する方へ
卵子凍結保存とは
女性の卵子数は、胎児期の500~700万個をピークとして出生時には100~200万個まで減少し、その後も年齢が上がるごとに減り続け、増えることはありません。作られた卵子は、成熟の途中で眠った状態になっており、思春期以降に成熟して排卵されます。つまり40歳での排卵は40年間眠っていた卵子が成熟して排卵されることになります。このため、女性が年齢を重ねると卵子の量と質の両方が低下することになり、妊娠が難しくなると考えられています。
現在パートナーはいないが将来子どもを持ちたいとお考えの方や、結婚していても仕事やその他の事情ですぐに妊娠を考えられないという方が将来妊娠する可能性(「妊孕性(にんようせい)」といいます)を残すために、卵子凍結保存という手段があります。卵子凍結とは受精前の卵子を保存のために凍結することです。(将来妊娠を希望した時に凍結卵子を融解して精子と受精させ、発育した受精卵を子宮内に移植します。)一方で精子と受精させた受精卵を保存のために凍結することは胚凍結といいます。
卵子凍結には、上記のように健康な女性が年齢とともに妊娠しにくくなることを懸念して行う「ノンメディカルな卵子凍結」と、抗がん剤や放射線治療によって卵巣機能の低下が起きるかもしれないがんなどの患者さんが、がん治療後に妊娠できる可能性を残すためにあらかじめ卵子を採取、凍結保存する「医学的適応による卵子凍結」があります。当院では、「医学的適応による卵子凍結」は行っておらず、「ノンメディカルな卵子凍結」のみを行っております。
卵子凍結の注意点
卵子凍結は年齢による妊娠率の低下に備えることができるというメリットがある一方、以下のような注意点もあります。これらの点をよく理解したうえで凍結保存を希望される方にのみ実施します。
- 1.凍結した卵子の融解後の生存率は約80%との報告があり、胚凍結の場合よりも生存率が低くなります。
- 2.卵子を凍結保存する際には、卵子の周りにある顆粒膜細胞(かりゅうまくさいぼう)という細胞を取り除きます。この顆粒膜細胞は、通常、卵子が体内で成熟するのを助ける細胞です。しかし、凍結保存のプロセスでは、これらの細胞を取り除いたほうが卵子をうまく保存できるからです。卵子を凍結保存してから、将来それを使いたいときには、まず卵子を解凍します。解凍した卵子は、顆粒膜細胞が取り除かれているので、通常の方法では精子と結合するのが難しくなります。つまり、凍結保存された卵子を使う際には、顕微授精という特殊な方法が必要になる、ということです(通常の体外受精法では受精できません)。
- 3.年齢を重ねてからの妊娠・出産は妊娠高血圧症や妊娠糖尿病、産後の子宮収縮不全などのリスクが高くなるといわれています。
- 4.卵子を凍結するためには、採卵費用以外にも診察、注射や採血、超音波検査などの費用がかかります。また、凍結した卵子の保管期間は1年間であり、その後も保管を続ける場合、毎年の更新費用が必要となります。
- 5.当初の保管期間である1年間の期限内に所定の保管期間延長手続きを行っていない方の凍結卵子に関しましては、ご本人への連絡は行わずにクリニックにて破棄させていただきます。
東京HARTクリニックで行っている卵子凍結保存について
対象となる方
将来のために妊孕性温存を希望される20歳から42歳の女性
(自治体による助成金を申請希望の方は、各自治体の条件をご確認ください)
保存期間
1年間
※保存期間の延長を希望される場合は、1年毎に更新手続きが必要です。更新手続きされなかった凍結卵子は破棄されます。
※凍結卵子の保存は、最長でもご本人が50歳の誕生日を迎える前日までとしております。
費用
卵子凍結保存は保険の対象となっておりませんので、以下の費用を自費でお支払いいただきます。なお、採卵までの診察・注射・検査にかかる費用は別途必要となります。診察・注射・検査の内容は、患者様一人ひとり異なるため、来院時にご確認ください。
項目 | 費用(消費税込) | |
① | 採卵および卵子の成熟度の確認 ※2・3 | 330,000円 |
② | 卵子の凍結および保管(1年間) ※1 | 1容器あたり 66,000円 |
③ | 凍結卵子保管期間延長(1年毎) | 1容器あたり 66,000円 |
卵子凍結を正しく理解するために
日本産科婦人科学会では、「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」というページを作り、卵子凍結の背景、メリット/デメリット、卵子凍結の方法などについて希望者向けの動画を作成し公開しています。当院で卵子凍結を希望される患者様は、受診前に必ずこの動画をご覧いただき、卵子凍結について正しく理解したうえで受診してください。
受診方法
当院で卵子凍結を希望される方は、不妊治療を希望される方と同様に、初診のご予約をお取りください。初診のご予約方法は、「初診について」のページをご覧ください。
※卵子凍結の詳細について、お電話でのご質問やお問い合わせにはお答えできかねます。詳しく知りたい方は、初診をご予約の上、医師とご相談ください。
自治体の助成金をご利用希望の方
自治体が実施している卵子凍結保存・凍結卵子を用いた治療については、各自治体で条件等が決められていますので、当院ではお問い合わせにお答えできかねます。
東京都の卵子凍結事業については、こちらをご覧ください。