全胚凍結法は卵巣高反応患者ではメリットがあるが、中反応や低反応ではそうではない。
(Fertility Sterility 2018 10月号 USAからの論文)
自己の卵子を用いた体外受精で、全胚凍結を行い、その後に最初の凍結融解胚移植(FET)を行った患者と、自己の卵子を用いた体外受精で、最初の新鮮胚移植(ET)を行った同様な患者で臨床的妊娠率と生児出産率を比較した。82,935周期を対象として、後方視的にデータ解析を行った。患者は採卵数別に、1~5個の卵巣低反応、6~14個の卵巣中等度反応、15個以上の卵巣高反応群に分けて比較した。
分析の対象となった82,935周期の中で、69,102人が初回の新鮮胚移植を、13,833人が初回の凍結融解胚移植を行った。
高卵巣反応群ではFETとETでは、臨床的妊娠率(CPR)はそれぞれ61.5%と57.4%、生児出産率(LBR)は52.0%と48.9%、流産率(MR)は15.0%と13.8%でFETの方が良好であった。
中反応群では同様にCPRがそれぞれ44.2%と49.6%、LBRが35.3%と41.2%、MRが19.3%と15.7%であった。
低反応群では同様にCPRがそれぞれ15.9%と33.2%、LBRが11.5%と25.9%、MRが26.8%と20.5%であった。
全胚凍結法ではこの治療法を選択した理由はさまざまであるが、PGS周期は除いている。年齢はETとFETとで、低卵巣反応周期では患者の平均年齢がETで36.8歳、FETで38.2歳であり、FETの方が高齢であった。中等度卵巣反応患者もやはりFETの年齢が高い。
高卵巣反応群ではFETの方が、中卵巣反応群や低卵巣反応群ではETの方が臨床成績は良かった。出生時体重はややFETの方が重かった。
【感想】
低卵巣反応群では平均年齢が38.2歳と36.8歳であり、FSHの基礎値も12.1と9.7であり、FET群で明らかに高く、高齢による卵子の質の低下が考えられ単純比較はできない。中等度卵巣反応群でも同様の傾向があり単純比較はできない。低卵巣反応FETグループでは胚盤胞凍結融解移植は約25%で、約75%は分割卵凍結融解移植であり、分割卵凍結法が臨床成績低下に関係している可能性があり単純比較はできない。低卵巣反応群では正常受精数が2.4個と1.5個であり、中等度卵巣反応群でも6個と4.7個で似たような患者集団を比較しているとは考えにくい。したがって低卵巣反応群や中等度卵巣反応群を単純に比較し、FETの臨床成績が低いというには無理があると考える。低卵巣反応患者においては分割卵の全胚凍結よりは、新鮮胚移植の方が臨床成績は良いと言える。すなわち低卵巣反応患者の分割卵凍結融解移植法は臨床成績が良くないと言える。