当院院長 岡が、2016年9月15日(木)に軽井沢にて行われた第34回日本受精着床学会にて講演を行いました。
講演の内容を以下にご紹介します。
1.多嚢胞卵巣(PCO)で反復着床障害の患者の当院での救済法
当院で2015年1月から2016年1月までの約1年間に、全胚盤胞をガラス化保存し、融解胚移植を受けたPCO患者37人(平均年齢36.4歳)についてコンピューターデータベースより後方視的に検討しました。
37人中、出産あるいは継続妊娠は29人(78.4%)でした。内訳はHRT(ホルモン補充)周期に移植をして、24人(82.8%)(MD双胎1例)、クロミッド+HMG排卵周期移植が5人(17.2%)(DD双胎1例:1個移植+タイミング併用症例)でした。クロミッド+HMG排卵周期移植は、HRT周期で複数回妊娠が不成功であった7症例に行いました。
妊娠した5人は全て1回目のクロミッド排卵周期移植で妊娠が成立し、継続妊娠となりました。2人は妊娠しませんでした。妊娠した患者の平均年齢は35.4歳、非妊娠患者の平均年齢は40.1歳であり、有意差を認めました(p<0.01)。
1年間のガラス化胚盤胞融解移植で、PCO患者の78.4%が継続妊娠し、その82.8%がHRT(ホルモン補充)周期移植で妊娠しました。HRT周期で反復妊娠不成功であった7人にクロミッド排卵周期移植を行い、5人は1回で継続妊娠になりました。
PCO患者の一部には子宮内膜の日付の遅れや、内膜の質的な問題で、HRT周期よりも排卵周期のほうが着床しやすい例があると考えられました。一方、妊娠しなかった例では平均年齢が有意に高く、卵の質が悪い可能性が考えられました。
このことから、PCO患者はしばしば排卵誘発が困難であるが、HRT周期のガラス化胚盤胞融解移植で繰り返し不成功の場合、排卵周期の移植を検討することが重要であると考えられます。また、排卵周期の移植でも不成功の場合は、PGS(着床前診断)などが有効である可能性があると考えられます。
2.ガラス化胚盤胞融解移植をD5とD6に行った場合の着床率と妊娠率と継続妊娠率の結果から、着床期のウィンドウを年齢別に考察する。(東京HARTクリニック、2013)
着床率とは胚盤胞1個あたりの妊娠(胎嚢確認)率です。妊娠率は1個以上の心拍が確認できた症例の割合です。移植に先立って子宮内膜日付診は行っていません。
39歳以下と40~42歳ではD-5移植の方がD-6移植での着床率、妊娠率、継続妊娠率よりやや高い傾向がありました。
一方43歳以上では、D-6移植の方がD-5移植より着床率、妊娠率、継続妊娠率が高い傾向が認められました。
着床期のウィンドウがあるとすれば、43歳以上ではウィンドウの発現時期が遅れている可能性があると考えられました。