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凍結胚盤胞移植における、自然周期とホルモン補充周期の妊娠率と流産率の比較

院長記事

凍結胚盤胞を融解移植する際に、自然周期とホルモン補充周期のどちらが良いか当院の成績で検討しました。

背景;2019年の欧州生殖医学会(ESHRE)では、凍結融解胚移植において、自然周期の方がホルモン補充周期より妊娠率は変わらないけれども流産率が有意に低いとの口演が少なからずあった。

方法;2015年から2019年までの4年間の当院での凍結胚盤胞融解移植1869周期について、自然周期の643周期とホルモン補充周期の1226周期で、その臨床結果から妊娠率と流産率に差が出るかを後方視的に調べました。

結果;凍結胚盤胞融解移植における自然周期での妊娠率、継続妊娠率と流産率はそれぞれ39.2%、32.8%と21.4%であった。ホルモン補充周期ではそれぞれ40.9%、35.8%と22.5%であった。有意差はないもののむしろホルモン補充周期の方の臨床成績が良好であった。流産率は同等であった。年齢別に分けて、39歳以下の自然周期ではそれぞれ48.8%、42.8%と16.7%であった。ホルモン補充周期ではそれぞれ、53.0%、48.3%と15.6%であった。ホルモン補充周期の方が有意差はないもののいずれも良好であった。40歳以上の自然周期ではそれぞれ28.9%、22.2%と8.7%であった。ホルモン補充周期ではそれぞれ28.8%、23.2%と35.2%であった。40歳以上では、臨床成績は変わらないものの、ホルモン補充周期の方が有意に流産率が高かった。

結論;自然周期もホルモン補充周期も当院のデータでは違いは見られず、39歳以下ではむしろホルモン補充周期の方が良好であった。

考察;ホルモン補充周期では、欧州でのように、黄体ホルモンの膣錠投与のみでは血中黄体ホルモンが上がりにくい症例があり、妊娠しても黄体ホルモンが上昇しないため流産が多くなる可能性がある。当院では全例経口黄体ホルモンを併用するため流産が増えない可能性が考えられる。ただし40歳以上ではホルモン補充周期での流産率が有意に高いことから、高齢での黄体ホルモンの吸収など黄体補充の検討をする必要があると考える。