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凍結胚盤胞融解移植において、PCO(多嚢胞卵巣)患者と原因不明不妊患者の自然周期とホルモン補充周期の臨床成績の比較

院長記事

当院での凍結胚盤胞融解移植において、PCO(多嚢胞卵巣)患者と原因不明不妊患者の自然周期とホルモン補充周期の臨床成績を比較しました。

目的;PCO患者と原因不明の患者に分けて凍結融解胚盤胞移植の臨床成績を比較し、PCO患者の特性の知見を得て、治療周期を検討する。

対象;2015年から2019年の期間に、当院で凍結胚盤胞融解移植を受けた、PCO症例と原因不明不妊症例が対象である。40歳以上のPCO症例が少なかったため、39歳以下を対象とし、PCO 144周期と原因不明548周期について自然周期とホルモン補充周期における臨床成績を比較検討した。

結果;凍結胚盤胞融解移植において、39歳以下のPCO症例では、自然周期の胎嚢確認による妊娠率・継続妊娠率・流産率はそれぞれ61.9%, 54.8%, 15.4%あった。ホルモン補充周期ではそれぞれ57.8%, 50.0%, 23.7%であった。有意差まではないものの、自然周期の方が臨床結果は良好であった。一方、原因不明不妊症例では自然周期でそれぞれ48.8%, 42.8%, 16.7%、ホルモン補充周期でそれぞれ53.0%, 48.3%, 15.6%であった。こちらは逆にホルモン補充周期の方が臨床結果は良好であった。

考察;PCO症例では、自然周期の方が妊娠率や流産率は良好である。理由ははっきりとはしないが、ホルモン補充周期であってもPCOの場合卵巣のホルモン分泌を抑えきれてないことと関係している可能性がある。2019年のESHREの学会報告では、凍結融解胚移植は自然周期の方が流産率は低いと報告があったが、当院の原因不明不妊症例では、逆にホルモン補充周期の方が流産率が低く、継続妊娠率も良好であった。流産は血中黄体ホルモン濃度と関係があり、当院では全例で黄体ホルモンの膣錠に黄体ホルモンの経口剤を加えて投与していることから、ホルモン補充周期でも黄体ホルモンの低下が起こりにくいことが考えられるのと、正確に黄体ホルモン投与後に子宮内膜の日付を合わせて移植できることが原因の一つと考えられる。