“GnRH agonist and hCG (dual trigger) versus hCG trigger for final follicular maturation”
2020, No.7, Human Reproduction
最終的な卵胞成熟へのデュアルトリガーとしてのGnRHアゴニストと組み合わせたhCG投与と、hCG単独投与の比較(カナダからの論文)
【背景】
哺乳動物では、自発的な排卵前にFSHとLHの両方が急上昇し、最終的な卵胞の成熟と排卵が起こる。トリガーとしてのヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)の投与(5000~10000単位)は採卵36時間前行われ、その作用は黄体期を通じて数日間持続する。一方、GnRHアゴニストにより誘発されるサージは、卵胞をLHとFSHにさらす。しかしその作用時間は短く、着床と妊娠継続を促すために強力な黄体サポートが必要である。最近の後方視的研究では、卵胞成熟にデュアルトリガーを使用するとIVFの結果と妊娠率を改善することが示唆されている。前方視的にデュアルトリガーの有効性を検討した。
【対象と方法】
2016年5月から2018年6月の大学付属IVFセンターの155人の患者で、AMH>1.0ng/ml、AFC6~20個、FSH<20IU/Lを対象とした。
ゴナールFとセトロタイドを用いたGnRHアンタゴニスト法で、
(1)hCGグループ:HCG10000単位とプラセボの生食をトリガーとして使用。
(2)デュアルトリガーグループ:GnRHアゴニストとHCG10000単位をトリガーとして使用。黄体ホルモン膣錠はプロメトリウム200㎎を1日3回使用した。
【結果】
デュアルトリガーグループでは、採卵数、成熟卵数、胚盤胞、最高品質胚盤胞数が増加し、胚盤胞数の増加により出生率も増加した。余剰胚はデュアルトリガーで有意に多かった(4個対1.8個)。
・卵と胚の結果
hCGトリガー | デュアルトリガー | |
患者数 | 78人 | 77人 |
平均年齢 | 36歳 | 35.4個 |
採卵数 | 11.1個 | 13.4個 |
成熟卵数 | 8.6個 | 10.3個 |
正常受精数 | 6.3個 | 7.8個 |
胚盤胞数 | 2.9個 | 3.9個 |
最良好胚盤胞数 | 1.4個 | 2.4個 |
・妊娠結果
hCGトリガー | デュアルトリガー | |
患者数 | 75 | 74 |
新鮮胚移植妊娠率 | 17/33 (52%) | 12/23 (52%) |
全体の着床率 | 28/114 (45%) | 42/97 (43%) |
最良胚/全胚移植の割合 | 51/114 (45%) | 63/97 (65%) |
妊娠率(移植あたり) | 28/107 (24%) | 42/91 (46%) |
妊娠率(患者あたり) | 28/75 (37%) | 42/74 (57%) |
移植あたりの生児出産率 | 24/107 (22%) | 33/91 (36%) |
累積出産患者数 | 24/75 (32%) | 33/74 (45%) |
【考察】
デュアルトリガー後のIVF結果が改善された理由は、GnRHトリガー後の内因性FSHサージによる追加の利点と、LH受容体に対するLHとhCGの両方の相乗効果であると推測される。
※患者背景などから考えると、デュアルトリガーの群のほうが卵巣反応が良好であった可能性もあり、参考までの報告と考えます。